2025/02/04その他
Web3.0 x メタバースデジタル空間の変容について
CISO事業部 中村 和之
「Web3.0,メタバース」という言葉が世に出て久しいですが、未だに何者なのか?今後、世の中に一石を投じるテクノロジー変革の一手に成りうるのか?あやふやな点が多いため、自分の理解のためにも少しまとめてみようと思います。
そもそも「Web3.0」とは何を指すのか?「メタバース」とは我々人類にどのような果実をもたらすのか?それとも害悪となりうるのか?日頃、キーワードだけ先行しており、頭の中に"モヤモヤ"と漂っているこの2つの流れについて少しまとめてみようと思います。
まず、ありきたりではありますが「Web3.0」と「メタバース」をウィキペディアで引いてみました。
次世代のワールド・ワイド・ウェブとして提唱されている概念である。分散化・ブロックチェーン・トークンベース経済などの要素が取り入れられており、一部の技術者やジャーナリストは、「ビッグ・テック」と呼ばれる大手IT企業にデータやコンテンツが集中しているとされるWeb 2.0とこれを対比させている。「Web3」という用語は、2014年にイーサリアムの共同設立者であるギャビン・ウッドによって作られ、2021年に暗号通貨愛好家や大手IT企業、およびベンチャーキャピタルなどから関心を集めた。Web 3.0とも呼ばれる。
日本にあっては主にバーチャル空間の一種で、企業および2021年以降に参入した商業空間をそう呼んでいる。将来インターネット環境が到達するであろう概念で、利用者はオンライン上に構築された3次元コンピュータグラフィックスの仮想空間に世界中から思い思いのアバターと呼ばれる自分の分身で参加し、相互に意思疎通しながら買い物や商品の制作・販売といった経済活動を行なったり、そこをもう1つの「現実」として新たな生活を送ったりすることが想定されている
出所:ウィキペディア
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8
「Web3.0」における重要なポイントは、トークンベースにて全てがやり取り、決定されることだと思います。ブロックチェーンにより今まで開けっ放しだった家に鍵を掛けるように全てのトランザクション(取引)が分散して記録され改ざんすることが不可能となり、全ての通信が高度な暗号化技術により安全に行われるようになる。そのような変化はありますが、大なり小なりコミュニティにおける意思決定や経済活動における契約が全てトークンベースに置き換わる事の方が最も重要な変容であると考えます。トークンベースとは、分散型・トラストレス・非中央集権化によってなりたっており、スマートコントラクトという「契約がブロックチェーン上に存在する"コード"により、事前に設定しておいたある条件を満たすと契約が自動実行される仕組み」を指します。つまり、今までのように契約書に合意の上でサインを行うというプロセスが必要なくなるということです。
「Web3.0」と「メタバース」に加えて、忘れていけないのは「生成系AI」の存在でしょう。映画「ターミネーター」のように"意思を持ち、自立学習して、人間と同等かそれ以上のニューラルネットワーク"を備えるまでには届いておらず、現状では自然言語を使った文章生成に特化したプログラム言語といったレベルですが、今後AIが完全自立化する日もそう遠くはないと言われています。
AIを構成するタスク(要素)としては、「問題解決」、「学習」、「意思決定」、「音声認識」、「画像認識」、「言語翻訳」が挙げられます。AIをタスクという形に分解してみると、メタバースのデジタル空間における必須能力をある程度備えていることに気づかされます。つまり、"AI x メタバース"でデジタル空間にてスーパーマン・スーパーウーマンのような別人になれるということです。ただし、冒頭に記載したように文化・コミュニケーション要素だけは依然として人類が"現実環境 x デジタル空間"に触れ影響を受けることで形作られる意思のようなものに関係し続けると考えられるので、その点については人智を超えることは難しいのでは?と私は考えています。
ただし、一つだけ産業界へ変革をもたらし、人々の暮らしを変える要素があるとしたら『インダストリアル・メタバース』でしょうか?どのようなものかというと、離れた場所にいる技術者が、時間や場所の壁を超えて共同作業ができるようにすることを目指したものであり、実用化されれば、製造業の現場には革新的な変化がもたらされるだろうと言われています。
メタバース = デジタル ツイン空間 + アバター(人、モノ) + 業務プロセス
図1.メタバースを構成する要素(製造現場のケース)
出所:福本 勲 著「製造業DX EU/ドイツに学ぶ 最新デジタル戦略」を基に作成(2023年12月22日 初版発行)
そのように考えると、『メタバース』とはデジタル空間に人やモノのアバターを配置し、それらがなす業務プロセスを表している世界を指すと置き換えることが出来るように思えます。現実世界をデジタル空間に再現し、3D化し、そのデジタルツインのデータを用い、マシンラーニングによる予測やレコメンドを実現することが可能となります。
最初は『WEB3.0』と『メタバース』を別々のビッグ・テックと捉えていましたが、調べていくウチに双方表情は違うものの、同じ側面を持っていることに気づきました。それは、「文化的な問題を解決する糸口になる」という事に他なりません。つまり、私たちが現実世界でどのように人と関わるか、自分自身をどう見るかは、私たちがオンラインの世界でじかに経験するものごとによって影響され、方向づけられるようになるということです。技術革新のように語られる事が多いですが、実は人類の進化に大きく影響を与える、人類史を大きく変えてしまう可能性を持っていると私は思います。それも全て、1998年Google設立、2007年iPhone発売というデジタル空間へ簡単につながることができ、世界中のデータ・情報へアクセスできるようになったからこその、「Web3.0 x メタバース」なのだと確信めいたものを感じます。
人類がデジタル空間にて意思・人格を持ち、トークンベースにより個人が権力を持つようになったとき、領域を気にせず活動できる場所が用意されつつある今、新たな法整備が必要な時期に来ているのかもしれません。
中村 和之(なかむら かずゆき)
2024年にデジタルアーツコンサルティング株式会社(DAC)
※2024/4よりアイディルートコンサルティング株式会社(IDR-C)へ社名変更
ヒューレットパッカード、パロアルトネットワークスを経て、ITインフラ・サイバーセキュリティの分野においてコンサルタントとして活動。最近では、多岐に渡るセキュリティ製品を顧客要件に応じて適切に組み合わせる知験作りにフォーカスした活動に注力しています。
Elizabeth Tinsley エリザベス ティンスリー(英文/スピーキング)
カリフォルニア大学 アーバイン校 仏教文化史 助教授
(University of Cambridgeにて学位取得)
https://elizabethtinsley.com/about/
アカデミックな経歴をベースに、欧州や米国、日本と日本の歴史文学・文化,芸術を新たな視点で紐解き、広める活動を行っています。