2025/04/14セキュリティソリューション

『ホモモーフィック暗号』

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『ホモモーフィック暗号』


執筆:CISO事業部 中村 和之

要旨

公開された同一インターネット回線上で秘匿性を保ちつつ、効率的にデータ通信を行うには多大なエネルギーを要する。平文から暗号文への変換や公開鍵方式を使用する際の計算も同様です。もし、全ての変換や暗号化計算無しに秘匿性の高いデータを送受信出来たらどうでしょう?それは、NextGenerationInternetと言えると思います。

記事本文

インターネットの前身「アーパネット」が世に出た1969年から改善を重ねて、研究者はより秘匿性の高い効率的・高速な通信を求めてきました。そして、概念・方式・次世代技術等、元の技術を大きく塗り替えるようなものも出てきました。それは、衛星を使った地上と宇宙空間(低層)を経由した新たなインターネット網です。省エネルギーで高効率、そして秘匿性はより高くといった難題を突き付けられながらも前に進み続けた結果生まれた技術だと思います。

 そのような技術革新の潮目に注目されているのが「ホモモーフィック暗号≒同型暗号化(Homomorphic EncryptionHE)」といわれる秘匿性に特化した暗号化方式となります。しかし、本方式には前述の効率的(低消費)は依然課題として残っています。データを強固に守れるようになる分、リソース(CPU/Memory)を過分に消費します。

 

ホモモーフィック暗号化市場規模は、2023年に16,100万米ドルと評価され、2031年には29,762万米ドルに達し、予測期間2024-2031年にはCAGR 9.6%で成長すると予測されています。

 

本方式は、簡単に説明すると平文ではなく暗号化したままデータ通信および処理(解析、分析、拝読)を可能とする暗号化方式を指します。

 市場の伸びはかなり期待された数字となっているが、まだまだ課題も多く複雑な計算ロジックのためスケーラビリティや効率性については検討の余地が多分にあります。しかし、サイバーセキュリティと暗号化は表裏一体となっており非常に結びつきが強いため、昨今の+AIセキュリティ環境下において、より高度な秘匿通信を求められる中、非常に重要で注目される技術・方式として取り扱われています。

 特にクラウド環境においては、クラウドネイティブを推進する企業が長年課題として挙げていたものの対応に窮していたデータセキュリティの確保をクリアにしてくれます。現環境の延長として進歩する技術もあれば、一気に蛙飛びで現環境をひっくりかえしてしまう可能性を秘めた量子計算暗号も迫ってきています。

既に現在の暗号方式にて安全性が担保されると言われている2030年まで4年を切っていますが、各社の取り組みが追い付いているとは言い難い状況となっている今、改めて夜を騒がせている「水道管問題」と同じくITインフラ問題を大きくとりあげ、きたるべく次世代暗号問題に真摯に向き合う必要があると感じています。

 

End

 

【プロフィール】

中村 和之(なかむら かずゆき)

2024年にデジタルアーツコンサルティング株式会社(DAC

2024/4よりアイディルートコンサルティング株式会社(IDR-C)へ社名変更

ヒューレットパッカード、パロアルトネットワークスを経て、ITインフラ・サイバーセキュリティの分野においてコンサルタントとして活動。最近では、多岐に渡るセキュリティ製品を顧客要件に応じて適切に組み合わせる知見作りにフォーカスした活動に注力しています。

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